小さな山寺の温かな晋山式


稚児行列

私の自坊の法類寺院(仏法上での親類関係寺院)である小さな山寺が、新しい住職を迎えることになり、先日、晋山式が執り行われた。
今までこのお寺には尼僧さんが住まわれていたが、一昨年の夏、お盆の施餓鬼法要の翌日に急逝された。
生前、この庵主さまから、「どうか私が亡きあとの後住を探して欲しい」と、法類である私に懇願されていたのであるが、亡くなられたあと、ご縁あって、間をおかずに後住を探し出せたことは本当に幸いで、心からうれしく思っているのである。
なぜなら、このお寺にはいわゆる檀家さんがないのである。
であるのに、8年前に本堂が建て替えられたばかりで、庫裡も建て替えられて20年も経過していない。
実はこのお寺のある自治区の人たちは、このお寺を村のお寺だとして大切に思い、各家にはそれぞれ別に他宗の願い寺があるにもかかわらず、本堂や庫裡の建築資金を負担し、庵主さまの生活費も負担してこられたという。
したがって、このお寺が無住になってしまわないようにしたいというのは、老いた庵主さんはもちろん、村人たちの悲願であったのだ。


ところが、全国には沢山の無住寺院があるのが現状なのである。さらに住職を専業にして護持していけないようなお寺は、跡継ぎがないと無住になってしまうのが実情なのである。
というわけで、庵主さんや村人から懇願されてしまった私だが、実際の所は、現実的に到底不可能な頼み事をうけて、内心たいそう困っていたのだ。
ところがである。
庵主さんの遷化されて間もなく、ありがたいご縁があって、ある若き学僧の入寺が決まった。
彼は寺には入りたいが静かに学問もしたいので、檀用が少ないのが望みという、なんとも奇特な和尚で、法類や村人たちとも出会ってもらった結果、すぐさま入寺が決まり、約1年半を経て、このたびの晋山式とあいなったのである。


晋山式の様子

村人たちの喜びようといったらない。稚児行列は70人もの子供が着飾って歩いてくれた。一俵ものお餅も撒いて、村中でのお祝いとなったのは言うまでもない。

餅まき