研修で大分を訪ねていた際、以前から親交のあるお寺のご婦人にお願いして、大分市内にある、竹工芸師 生野(しょうの)徳三氏のご自宅を訪ねた。
「雨竹」。ちょうど梅雨の時期であり、この床に相応しい軸がかけてある。
私事ではあるが、毎年年始には、先のお寺のご婦人が贈ってくださる、生野さん作の「翠竹箸(すいちくばし)」で、お正月のお雑煮を頂くことが恒例となっている。このお箸は青々としている上に、先が細く、長さもほどよく、とても使いやすいので重宝するのだ。
このたび大分滞在中に、竹細工の山地である大分で、是非、生野さんの工房をみたいと思いお願いして、その願いがかなった。
先代の故・生野祥雲齋は人間国宝であり、また徳三さんも日展会友として活躍されている。
このオブジェは、近く開かれるアメリカでの展覧会に出品されるというものだそうだ。非常に手の込んだもので、竹のしなやかさがそのまま表われているように感じた。
部屋の外には苔むした庭と池があり、蛙がなき、鯉が跳ねる。ご自宅の裏には山が広がり、涼しい風が吹いていて、別天地にいるような気分にさえなった。
丹念に制作された作品はどれも美しかった。工房も見せていただき、作品にされるまえの竹材もあり、貴重な時間を割いていただいたことに恐縮しつつも、いろいろと興味深いお話をうかがった。
もちろん禅文化研究所のこともご存じで、こんど京都にお出でになるときには是非お立ち寄り願うようにとお願いした次第。
自分が知らない世界が沢山あり、また、そこには優れた人がいる。
その人たちと話をすることはとても楽しく、自分の心も豊かにさせてもらえる。
ありがたいことである。