盂蘭盆に思う

蓮華

関東の盂蘭盆は7月だそうですが、ここ関西は8月盆ですから、愈々これからが本番です。炎天下、境内の墓地に出てお経を読まされるときなど、いったい誰がこんな暑いときをお盆に決めたんだと、秘かに恨めしくなります。しかし、お寺にやってくる人たちの顔ぶれが、いつもと違ってなんとなく華やいでいるのを見ると、こちらも汗を拭き拭き頑張らなければ、という気になります。
ここ滋賀の田舎では、昔からお盆になると、都会で暮らしている人たちが、家族を引き連れて故郷へ帰ってきます。するとお寺が一変して、昔馴染みの社交場と化すのは不思議な夏の風景です。それを見ると寺の和尚や寺庭の者も、今更のように日本仏教の健在を実感し、得も言われぬ充実感に満たされたりするのです。
誰かの句に、-墓拝む 人の後ろを 通りけり-というのがあります。今年もお盆を迎え、普段はすっかりご無沙汰していた亡き人たちへのお詫びにと、花や線香を持ってお墓へやってくると、もう既にみんなが墓を洗ってお供えを済ませ、一心にお経を唱えています。その邪魔にならないように、そっと後ろを通らせて頂く、という状景ですね。
私はそこに、日本人としての、言葉に表せない共感が詠われているように思います。仏教が難しい教理や厳かな儀式によってではなく、このような深く素朴な民俗信仰に支えられて伝えられてきたものだということを、今年もまたこうして私は実感させていただくのです。そういうお盆に会うのももうあと何回か、などとわが命を惜しみながら。
禅文化研究所所長 西村惠信
*研究所は、明日8月9日より17日までお休みをいただきます(ブログもお休みさせていただきます)。
お問い合わせや、書籍などをご注文いただきました方には御迷惑をおかけいたしますが、どうか宜しくお願い申し上げます。