少々わかりにくいかもしれないが、ごらんあれ、この布袋さんの足の親指。まるで生きているようでしょう?
岡山県の伊部(いんべ)駅の近くの備前焼きの里にならぶ窯元の店を歩くうち、ある一軒の店に入ると、少し耳の遠いおばあさんが店番をされていた。
ふと見ると、店の机の上に読みかけの『床の間の禅語』が置いてあるではないか。
おばあさんに、「この本は私の勤務先が出版している本なんですよ」と言うと、「いろいろとあるけど、この本が一番いいので、いつも側において読んでいる」と嬉しいお言葉。ご子息が禅の本を何冊か持っていらして、その中でもこの本が一番良いとおっしゃっているとも伺った。有難いことである。
そういうご縁に根っから弱い私は、この店がとても気に入った。
それだけではない。この店の随処には山野の花がきれいに活けてあった。
そこにあったこの布袋さんの香合を買い求めたのである。
陶芸家は、小西陶古という女性作家である。
土は備前のものだけを用い(最近ではなかなか土が採れないらしく、他の土地の土を混ぜて焼くものがあるそうだ)、窯は松割木だけで焼くという方法に拘っておられるようだけあって、色合いが非常に美しい。
(E.N. Wrote)