ガラスは液体!?

ガラスと水

「ガラスは液体だ」
ある人が、こう主張しているのを聞いて、はじめは「またお得意の詭弁が始まった」程度に聞いていた。
しかし調べてみると、満更嘘でもないらしい。むしろ化学の世界では常識に属することのようだ。
我々の感覚においては、ガラスはどう見ても固体にしか見えない。しかし化学的に見た場合、ガラスは固体に特有の結晶構造をしておらず、液体のまま過冷却された「ガラス状態」という状態にあるとのことである。
たしかに、ガラスを熱すると次第に柔らかくなり、流動化する。中学校で習った、いわゆる融点というものがない。また、常温でもごくわずかではあるが、流動性を示すらしい。つまり、ガラスとは非常に粘性の高い液体、例えば硬い水飴のようなものとイメージすれば良いのだろうか。
ガラスは硬くて脆く、その破片はとげとげしい。繊細で傷つきやすい心をガラスの心と喩えたりもする。それに対して液体の代表格である水は、古来その適応性や柔軟性が賞讃されてきた。老子は「上善は水のごとし。水は善く万物を利して争わず、衆人の悪(にく)む所に処(お)る」と述べ、白楽天も「水は方円の器に任ず」と吟ずる。
この全くの正反対にみえる二つの物質が、実は同じ「態」に属するのである。
人も、目に見える性質の背後に、いかなる本質が隠されているのか分からない。表面的な性質だけで物事を判断してはならないと、改めて思った次第である。
(T.F Wrote)