貴重な遺産 -掛軸の太巻-

太巻

今月はお正月ということで、年頭にあたり、大切な掛軸などを出されたところもあったのではないでしょうか。その中には、「出してみたはいいけれど、本紙部分にこれまでなかった横皺や波打ち、または折れがでてきた」ということがあったかも知れません。
人は健康を維持するために色々と工夫をしています。それと同じように、古物にも少しでも健康でいてもらうために、何かできることはないでしょうか。
例えば、今回の掛軸などの軸物の場合でしたら、細く巻かれていた方が格好が良いのですが、細く巻くとどうしても本紙に負荷がかかってしまいます。上記の症状は、このことに起因することが多いようです。ですから、それらを軽減させるためには、保存時に太く巻いておくことが必要かと思われます。特に、この方法は本紙部分が硬くなったものや厚塗りの日本画などに効果があるようです。
太く巻くには、太巻(正式名称があるのでしょうか?)という専用の道具を用います。この道具は、桐で誂えるのが一般的なようです。確かに昔ながらの桐材は保存の面においても優秀で、やはりこれに勝るものはないでしょう。ただし、最近の桐材は品質に問題のあるものも存在するとのことですので、気をつけなければならないようです。また、誂えるとなると、数にもよりますが、とても高額になりますので、やらなければならないと分かってはいても、なかなか手を出しにくいことも確かです。
しかし、これらの古物は、かけがえのない貴重な遺産です。お寺をはじめ、保有されている方は、現在から未来にかけて、それらの古物の持つ色々な情報というものを、必要とする方々に対して提供できることが必要かと思われます。
大切な遺産を少しでも損傷などから守るために、各所蔵者自身が考えていくことが大切だと思われますが、いかがでしょうか。
※ ここでの紹介は、あくまでも筆者の個人的な考えです。実際に適用される際には、専門家等にご相談なさるか、それぞれの環境や条件にあわせて熟考した後、自己責任でお願いします。
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