霜を知らない子供達へ -田舎の禅寺の朝-


霜の降りた朝

もう立春を過ぎた。つまり暦の上では春なのだ。
ただ、朝夕はまだまだ冷え込む日もあり、文字通り三寒四温といったところか。
そんななか、先日も、自坊の裏の田畑は、まっしろに朝霜で覆われた。
朝霜に覆われた田んぼにカメラを向けていると、翼の黒白茶色のコントラストがはっきりした鳥が飛び立った。チドリ科の鳧(ケリ)という鳥らしい。田地や河原に住む気の強い鳥らしいが、飛んでいる色が美しい。
こんな田舎で生まれ育った私は当たり前のような景色だが、都会に育った子供たちは、「霜」が何なのかを知らないらしい。特に昨今叫ばれている暖冬のせいか、霜の降りる朝というのが少なくなってきているようだし、街のアスファルトの中では霜を踏むこともままならない。
文学作品中に、寒くいてつくような冬の「朝霜」の事が書かれていても、その情景が思い浮かばないのはなんとも悲しい。
霜柱を踏む、あの「サクッ」とした感覚を味わったこともないのだろう。


それから、霜の降りた草っ原に顔を近づけて見てみると、落ち葉に霜がついて、とても可愛らしいのである。自然が作った自然の化粧とでもいおうか。


朝霜に凍る葉っぱ
 
朝霜に凍る葉っぱ


朝霜に凍る葉っぱ
 
朝霜に凍る葉っぱ

朝日がのぼって、川も湯気を立て、今日も一日がはじまるとき。清々しい風景だ。

朝のせせらぎ