このブログでは、今のところ「映画 “禅ZEN”」への記事のアクセス数が多いので……、というわけでもないが、またまた映画のお話。
タイトルにある「映画 “おくりびと”」を、今頃になって観にいった。封切り当初からちょっと気になっていたのであるが、基本的にあまり邦画を観ないという性格のため、アメリカのアカデミー賞外国語映画賞部門にノミネートされたことを知って、慌てて行った次第である。
お恥ずかしい話、実はかなり泣かされてしまった。だが暗いだけの映画で無く、笑わせるところもあって、期待以上の上出来作品。
私も貧寺の住職であるから、檀家が亡くなると枕経に向かい、亡くなったばかりの故人に手を合わせることがある。
その人をよく知っている場合もあれば、そうでない場合もあるが、一様に「一生をお疲れさまでした」という思いをもって、枕経の前にお顔にかかった白い布をとって合掌することにしている。
そして、その後、私が帰山したあとに納棺が行なわれており、次に出向いた通夜の時には、故人は既に棺の中ということになるのだが、その私たち僧侶が知らない間(中には立ち会っている方もおられるかも知れないが)に行なわれている、納棺師の仕事を見ることができた映画だ。
精しいあらすじは述べることもないので割愛するが、納棺師の立場はもとより、そのおくりかたを受けた遺族の感謝の言葉や様子をみて、人をおくることを担っている私たち僧侶としても、今一度、考え直さなければならないものだと感じた。
おくられる故人はもとより、おくる遺族の気持ち、どちらもが納得できる葬儀がしたいと思う。
主演の本木雅弘は、この映画の原案を10年も暖めてきて役に臨んだと聞く。十分にこの納棺師という、ひとをおくる刹那に生きる仕事を表現していたと思える。
アカデミー賞にノミネートされてしかるべき作品だ。
知人のアメリカ人に聞いたところ、アメリカでも、Undertakerといういわゆる葬儀社が、こういった仕事をするようで、やはりお化粧をしたり体を拭いてあげたりして棺に納めるそうだ。日本と同じく、昔は家族が行なっていたようだが。
さて、当初の予定では、昨年9月から封切りで既に上映を終わっている映画館が多かったはずであるが、ノミネートされたためか、上映期間を延長したり、あらたに上映を始めた映画館も多いようなので、まだの方は是非見に行かれては如何だろうか。
余談だが、映画”禅 Zen”で唯一好演技だったと思った笹野高史が、この映画にも出演して、またなかなかいい役を演じている。そして、じつは「おくりびと」の一人である彼の言葉も重かった。
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