去る3月上旬に、妙心寺山内天祥院閑栖、釈浩堂師より図書の寄贈を受けました。主に和装本で25点131冊、内容は四書五経などの古典類が多数を占めています。また、今回ご寄贈いただいた図書には、釈師の学問の師である加藤恭道師(1881~1940)の旧蔵本も数点含まれています。
釈師は『晦堂集』(大心院、昭和16年)の編者として名前を載せておられますが、ご自身が専修学院に入学されてから加藤師が亡くなるまでの、約20年の長きにわたって親炙されていたとのことです。
加藤師は、大正より昭和初期にかけての臨済宗門を代表する学僧であり、妙心寺派普通学林中学部を卒業して、相国寺の橋本獨山老師の鉗鎚を喫し、また寺西乾山氏に師事して漢学を修め、宗旨に明るく且つ文字の使い方に練達した、詩偈の権威として認識されていたとのことです。同時代には、小畠文鼎師が相国寺長得院におられ、当時の宗学の双璧として、荻須純道師に言わせると、「『五山に小畠、妙心に加藤』とは何人と雖も異口同音に讃えた」方だったとのことです。
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ちなみに、当所には寺西乾山氏の旧蔵本も、親族の方からのご厚意で所有しており、「寺西文庫」として使用させていただいておりますが、学問的に「寺西乾山先生の唯一の後継者」と竹田頴川老師に言わしめた加藤師の旧蔵本を、ご寄贈いただけるとは思ってもいませんでした。ひょっとして、師匠である乾山氏がお呼びになられたのでしょうか。
また、その中には、晩年に講義しておられたという『荘子』など、加藤師の書き入れを確認できるものもあり、力勁い書態が少し擦れた感じの本紙と相俟って、師の学問の厳粛さの一端が窺えるような気が致します。
あらためて、ご寄贈いただいた釈浩堂師に感謝申し上げます。