滋賀県安土町にある安土城の大手門階段である。桜がみごろ(4月5日)。
ここにある織田信長の創建による摠見寺(そうけんじ)は今まで非公開とされてきたが、去る4月5日から日曜祝日のみ特別公開されることになった。
住職と懇意にさせていただいているし、自坊から近いこともあり、5日の朝一番に拝観より一足早く出向いてきた。和尚の許可も得て、ここでご紹介することにさせていただく。
この摠見寺は、本来は安土山の頂上付近にあった。今そこには、仁王門と三重の塔が現存するのみで、本堂や庫裡などは1854年に焼失してしまった。したがって、今の摠見寺は、明治以後に建てられたもの。戦国期には家康邸であった跡地である。
数年前に現住職(加藤耕文師)が入寺後、色々と修繕され、また手を加えられて、今回の公開にふみきられたのである。
では、なかなか特別拝観がかなわない方のために、その順路を追ってご覧いただこう。
まず玄関から本堂に入ると手前の部屋には、日本画家赤沢嘉則氏の描かれた「老櫻」の襖絵が目に入る。
本堂正面には、本尊聖観世音菩薩像の向かって左手に、信長公の木像が祀られている。御本尊と信長公の撮影は遠慮させていただいた。
さらにその奥の部屋の襖絵は、ここ摠見寺の執事である山本燈舟氏の描かれた水墨画「安土八景」。とても緻密な絵に感心するばかりであるが、実はこの山本燈舟氏は八十歳を超えた日本酒の好きな好々爺なのである。
本堂から渡り廊下をつたって新しい庭を眺めながら茶室に向かう。ここではお抹茶の接待が受けられる。
お茶室から戻るときには、今度は本堂の裏手へ案内される。
ここにも襖の新調された二部屋がある。
まず一室目には、現在、妙心寺僧堂師家として修行僧を接化されている岫雲軒(しゅううんけん)雪丸令敏老師の力強い墨蹟「清風明月」が書かれた襖絵を目にする。岫雲軒老師はこの摠見寺の先々代の住職であったのだ。
続いての部屋には、禅文化研究所・西村惠信所長筆の「十牛図」を貼った襖が入っている。じつはこの十牛図は、『十牛図 -もうひとつの読み方』(禅文化研究所刊)で使用したものだが、住職のご希望によって、ここに襖として登場することとなった次第。
なお、摠見寺を拝観されるには1000円の特別拝観料が必要であるが、お茶室でお抹茶と蓬団子(安土山でとれたヨモギを使った自家製)がいただける。原則的に観光期の日曜祝日に公開されるが、雨天の場合は中止されたりすることもあるのでご注意。
追記:映画「火天の城」が、現在公開中につき、来場者も急増している様子である。(2009.11.4.)