西国観音霊場 第3番 粉河寺に詣る


第3番粉河寺

「ふぼの めぐみもふかき こかわでら ほとけのちかい たのもしのみや」
第2番の紀三井寺と同じ日に、程近い第3番の粉河寺(和歌山県紀の川市粉河2787)にもお参りした。
紀三井寺は、楼門や多宝塔が鮮やかな朱色に塗り直されたばかりで、まばゆい印象であったけれども、この粉河寺は重厚な色合いである。
ここは階段は少ないお寺で、山門をくぐってから敷石の上を、境内を流れる清流沿いに本堂へと歩んでいくと、蓮の花をかたどった御手洗がある。とても美しい造形だ。

御手洗

御手洗のすぐとなりにある中門もまたしかり。「風猛山」の扁額は、紀州徳川十代藩主治宝侯によるものらしいので、この門も何か東照宮の建物のような形のような気がするのは私だけだろうか。



粉河寺 中門

中門をぬけ、桃山時代に作庭されたらしい枯山水の庭をみながら、正面に仏殿を望む。
一重屋根と二重屋根が結合した珍しい複合仏堂は、観音霊場の中でもひときわ大きい。
本尊は、千手千眼観音であるが、ここもご開帳日ではなかったため、心に想って手を合わせた。
私のすぐ後に、団体での遍路さんたちが見えて、般若心経や延命十句観音経をお勤めになったので、私もそっと同調した次第。

粉河寺 本堂

ところで、粉河寺の本堂の右奥に、十禅律院という天台宗のお寺がある。
粉河寺の境内を通らなければ行けないような気がするのだが、台風の被害にあったということで、本堂を始め諸堂は目も当てられないほどの状況であった。
実はこの寺は、粉河寺の中門扁額を書いた徳川治宝侯ゆかりの寺であるとのこと。
しかし、案内をしてくださった奥さんらしき方のおっしゃるには、ここは無檀家の寺院なので、あちこち痛んではいるものの、手の付けようがないということだった。
美しい枯山水の洗心庭も、借景だったはずの山が住宅地になりつつある悲惨な状況。
お寺の維持運営には本当にお金がかかってしまうものなのだが、えてして、殿様が開基になっているようなお寺に限って檀家もなく、維持に困っているところが多いのも事実である。
鶯は江戸時代と変わらないきれいな声で唄ってくれたが、なんとなく悲しい気持ちで庭を後にした。