今年のGWは、高速道路の割引があったためだろうが、毎年に増しての大渋滞。私の住む滋賀県は、北陸道・名神・新名神・京滋バイパスのそれぞれのジャンクションがボトルネックになるので、ひどいありさまだったようだ。
そういうときは、近場の映画館でゆっくり映画でも……と思い、休み中に2本の映画を見に行った。1本は、「レッドクリフ PartⅡ 未来への最終決戦」、そして、もう1本はクリント・イーストウッド監督・主演の「グラン・トリノ」である。
「レッドクリフ」は文句なしに面白く楽しめたが、より心に残ったのが「グラン・トリノ」だった。ポスター写真だけ見ていると、えらく怖そうなものだが、基本的には、いたって静かな映画だという印象。
クリント・イーストウッド扮するウォルトは、アジア人に偏見をもち、現代の若者を嫌う、頑固で偏屈な正義感を持つ初老の男である。妻に先立たれた葬儀で若い神父が「生と死」についての説教をしたが、神学校出たばかりの頭でっかちの神父の話など聞かないと毒づいている。一人残された父親を疎ましく思っている二人の息子家族も、はねつけるばかり。
そんな折、彼が偏見をもつアジア人、モン族の一家が隣の家に越してきた。その家の少年タオと出会い、そしてその姉のスーとの出会いが、彼を徐々に変えていく。
朝鮮戦争で若い兵士の命を奪ったことの苦しみを、ずっとずっと抱えて生きてきたウォルトは、人生の終末をどう片付けるものかと考えていたが、タオを一人前の男にしてやろうとすることに生き甲斐を感じるようになった。
また、内向的だったタオもウォルトと出会い、働くことの喜びを得て、自分の人生を始めようとする。
すべて順調に運び出した時に事件が勃発する。そして迎える結末は映画をみていただきたい。
ちなみにグラン・トリノとは、ウォルトの所有する古い愛車の名前である。
さて、私は、この映画に出てくる若い神父が、頑固で偏見を持ってはいるが正義感の強いウォルトに馬鹿にされながらも、がっちりと向かい合っていく姿勢に興味を持った。
あるときは、懴悔を拒むウォルトに、なんとか懴悔させようと必死になる。
また、事件を起こした不良グループに強い怒りを持ち復讐を考えるウォルトに協調するものの、自分は宗教者であるという立場から、ウォルトを諭そうとする。
最後には、ウォルトとの出会いから、今まで「生」と「死」というものを、うわべだけ、教則本どおりに説いていたことに気付き、本当の生と死を語れるように育つのである。
そういえば、自分も若い頃にお説教した後に、檀家の長老から「まぁ、そのうち上手に話せるようになるわ」と言われて赤面したことを思い出した。
人生の終末を迎えつつある老人と、これからの人生に惑う少年、そしてそれを諭しつつ自分も育っていく宗教者。
人間愛に気付かさせる、とてもいい映画だった。