聖なる川 ガンジス -インド-


ガンジス川

映画『おくりびと』の主役、本木雅弘さんは、この川を見て、インドの事を書いた自著の中に、青木新門さんの著書『納棺夫日記』にあった一文を引用させて欲しいと申し出られたそうだ。
その一文というのが下記。
何も蛆の掃除までしなくてもいいのだが、ここで葬式を出すことになるかもしれないと、蛆を掃き集めていた。蛆をはき集めているうちに、一匹一匹の蛆が鮮明に見えてきた。そして捕らわるまいと必死に逃げているのに気づいた。柱によじ登っているのまでいる。蛆も命なのだ。そう思うと蛆たちが光って見えた。
(上記は、妙心寺発行の『花園』4月号 青木新門氏による特別寄稿文より)
当時まだ二十代であった本木さんが、この川を見て悟った死生観があり、そんな彼が主役を演じたからこそ、映画『おくりびと』は万人の心を打つ映画となったのだろう。
情けないかな、私はというと……


水壺、もちろん売ってます
聖なる川の水ですもの 持って帰りたいですよね

穏やかな田舎町カジュラホから一転して、どこからともなく溢れ出す、うかうかとは歩いていられないほどの人・自転車・リキシャ・車の波、体にまとわりつくような夏のインドの暑さ、豪雨で川と化した道、そして一番にビンビンと痛いほどに感じる大地と人のあまりにもの強いパワーに、心身共にクラクラしてしまっていた。どこかで感じた事がある…、そうだ、ここで感じためまいの数万倍のパワーだ…などと思いつつ……。
ネパールで、同じようにヒンドゥー教徒の亡くなった方達が荼毘に付され川に流されるような所を訪れていた為、さして変わりはなかろうと思っていたが、このヒンドゥー教最大の聖地はそんなにも甘くは無かった。
歓喜の表情を浮かべ、濁った川に体を浸す人達を前に、呆然と立ち尽くした。
さらに追い打ちをかけるかのごとく、ミネラルウォーターでお湯を湧かして欲しい…とホテルにて頼み、それで飲んだ紅茶で、友人と共にひどい下痢にみまわれる事となる……。
修行が足りない証拠哉。
それなりに楽しみにして行った聖地参拝は、旅程を変更するほどに悲惨な結果をみた。
それなのに、絶対にまたあそこにいつか行く!と確信しているからインドとは不思議な所なのである。
ベナレスの街
ええ、地面なんて見えません…