関西以外の地域ではなじみが浅いであろうが、滋賀や京都を中心として、夏休みも終わりに近づいた今日8月24日(旧暦では7月24日だった)の地蔵菩薩の縁日には、「地蔵盆」という行事がある。
多くは前夜23日~翌25日に行なわれる。発祥は滋賀県南部だとどこかで読んだ気がするが定かではない。
自坊にも飛び地に地蔵堂があり、地区の子供会などが中心になって行なわれる地蔵盆の行事が、子供達の楽しみにしている夏休みの一つのイベントにもなっている。
さて、上の写真は、江戸時代から自坊に伝わる地獄絵である。昔から地蔵堂にこの地獄絵をかけるのが風習となってきた。地区の大人たちも小さい頃にこの地獄絵を見て、肝を冷やした記憶があるのだ。
また、近くのニュータウンにも小さな地蔵堂があって、老人会の人たちのおかげもあって、毎年、地蔵盆にお参りに参らせていただく。
いつも自坊の地蔵堂には、上の地獄絵を飾り、子供たちにも見せてきたのだが、今年、ふと思い立って、ニュータウンの子供達にも、地獄絵を持っていって見せてやろうと思った。
お勤めの後で、子供たちを集めて話をする。
「誰かこの中で、嘘をついたこと無い人~」
しーん
「誰かこの中で、何か生き物の命を奪ったことの無い人」
しーん
「ほらこれが閻魔大王。こちらがお地蔵さん。閻魔さんは地蔵さんの化身なんだよ」
こうして子供たちに、ひどい嘘をついたり、やみくもに殺生をしたりして、反省もしないでいたら、恐ろしい地獄に堕ちる話をする。
反応はいたってオモシロイ。
今までこんな話も聞いたことなければ、こんな恐ろしい絵も見たことない様子だ。
いや、今どきのゲームはもっと恐ろしいシーンもあるのだろうが、江戸時代に描かれたこの絵も、子供たちにはインパクトがあったようだ。
2年生くらいの男の子が、真剣に絵を見つめながら言った。
「なんか死ぬのが怖くなってきた」
一同が笑った。
でもそこには、何かしら他の子供たちにも共感を得たような笑いがあった。
我々が子供だった頃にも、この絵をみて、なんとも言われぬ恐ろしさを感じ、一年に一度とはいえ、子供ながらに懺悔の心を得たものだと思う。
今の子供たちにはこういう機会がない。
昔は、自分たちの手にはおえない、とても偉大な力があって、いたずらするときでも、これ以上のことはしてはいけない、ばちが当たるというような考えが自然に芽生えていたのだろう。だが、今はそういう考えを持てる機会が少ないのだ。
だが、この地獄絵を見せただけで、「なんか死ぬのが怖くなってきた」という思いを持つ子供も少なからずいることに気づかされ、ホッとしたのだった。
心が暖かくなった。まだまだ捨てた物じゃないぞと。
大いなるものに生かされていることを、子供達ならずとも、我々も今一度感じてみるいい機会なのではないだろうか。
余談だが、関西では地蔵盆頃になると、スーパーなどで販売されるのがこの箱。地蔵盆お供え用のお菓子パッケージ。お地蔵さんが意匠になって、地蔵盆という文字まで入っているのがユニークではないか。