良寛さんの五合庵のある山続きに、弥彦山という山があり、そのふもとに越後国一宮の弥彦神社(いやひこじんじゃ)がある。地名は「やひこ」と呼ばれるので、通常は「やひこじんじゃ」とよばれるが、古くは「おやひこさま」と呼ばれていたという。
越後の国の開拓神・伊夜彦神(天香山命)をお祀りしている。
古来は万葉集に、
「伊夜比古おのれ神さび 青雲のたなびく日すら 小雨そぼ降る」
「伊夜比古 神の麓に今日らもか 鹿の伏すらむ皮衣きて 角つきながら」
という歌が残されている古い神社である。
鳥居をくぐると、清涼な流れの御手洗の川があり、杉の大木に覆われた参道を歩く。
一旦左に曲がるところに社務所があるが、その近くに椎(しい)の御神木があり、その前に良寛禅師の「御神木讃歌」というものが掲示されていた。
御神木讃歌
伊夜比古の 神のみ前の
椎の木は 幾世経ぬらむ
神世より 斯くしあるらし
上つ枝は 照る日を隠し
中つ枝は 雲を遮ぎり
下つ枝は 甍にかかり
久方の 霜はおけども
永久に 風は吹けども
永久に 神の御世より
斯くしこそ ありにけらしも
伊夜比古の 神のみ前に
立てる椎の木
良寛さんの頃には、こんなに枯れてなく、まだ青々とした葉をつけていたようすが、歌に表われている。
さらに参道を進み本殿へと向かう。後方に弥彦山を控え、それが借景となって美しい本殿だ。平日だったこともあるので、社殿に参詣している人は比較的少なかったので、こんな無人の本殿にお参りすることができた。
こういう歴史ある神社にお参りすると、やはりお寺とは違う神々しさを感じ、神妙な気持ちになる。