但馬の小京都といわれる出石にある宗鏡寺(すきょうじ)は、通称沢庵寺と呼ばれる臨済宗大徳寺派の古刹である。もとは東福寺派に属し、戦国大名山名氏の帰依を受け山陰唯一の伽藍を誇っていたが、羽柴秀吉の但馬攻めにより山名家が滅亡し、寺もまた荒廃した。
これを再興したのが、この地に生まれた沢庵宗彭(そうほう)である。
沢庵禅師といえば、徳川家光をはじめ多くの大名の帰依を受け、柳生宗矩に剣術の心得を教えた人物としても知られ、今日食膳におなじみの「沢庵漬」は、禅師の工夫によるものとも言われている。禅師は晩年、家光により建立された江戸の東海寺に住するが、生涯を通じて最も親しんだのが、故郷にある宗鏡寺である。
出石までは私の自坊から車で2時間ほど。山と川に囲まれ静かな佇まいをみせる町並みは、殆どの名所旧跡が歩いて回れる距離にある。