堤側庵 -三重県名張市-

堤側庵

名張の知人に連れられ、とあるギャラリーを訪れた。
このギャラリーへの道は、どことなく情緒があり、尋ねてみるとやはり昔は伊勢参りの為の街道-初瀬(はせ)街道-だったとか。
そんな街道沿いにある、提側庵(ていそくあん)は、古い家屋を改造して作られたギャラリーだ。
古い建物や、立派な古い梁を生かしつつ改築し、現代的に開放された空間が居心地良い。


現在こちらでは、伊賀焼の谷本景(たにもと・けい)さんの作品展が開催されている。
茶道を嗜む方はよく耳にするであろうこの伊賀焼。
戦国時代から江戸時代初期の武将、藤堂高虎の娘婿が小堀遠州であった事からその庇護を受け、遠州七窯の一つに数えられている(伊賀焼ではなく、古曽部を七窯の一つとする説もあり)。
伊賀独特のびいどろ釉の照りや、こげの出た耳付花入、どっしりとした水指は、わびさびを好む茶人にはたまらない一品だ。
遠州が好んだことからも、わびさびに加えて、きれいさび(茶道遠州流はこれをモットーとしている)として見てとれる作品もある。
なにはともあれ、心地良い空間で、素敵な作品を拝見し、目の保養となった。
ふと、一枚板で作られたテーブルに、見たことの無いような素敵なクロスがある。
くみひもで作られたものだった。さらに窓辺にはタペストリーも。
実はこのギャラリーを営むお家、家業としては、先々代の頃から組紐(くみひも)を作られているらしい。
組紐と言えば、着物で使う帯締めくらいしか想像しなかった為、驚きながらも感心することしきり。
古き良きものを生かしつつ、現代にも馴染むものをも創り出す、職人の技を見た。
近くに行かれる際は、是非立ち寄って欲しい。