春、秋と年に2回楽しみにしているのがこちらの展観です。
今回のテーマは、『秋興の茶』。いつもこちらの展観のテーマは美しい日本語ですので、それもまた楽しみなのです。
秋は空気が澄み空高く、茶花も、美味しい食べ物も豊富で、山の彩りも錦で豊かになり、大好きな季節です。そんな秋の茶事とは如何に?!と思わせる、“秋興”の文字。
懐石に始まり、小間での重厚な濃茶、広間での心軽やかに楽しめる薄茶、そんな茶事に使われる道具組が順を追って観られます。
とりわけ心に残ったのが、千家十職のうちの、樂焼のお茶碗を作る家、樂家の七代目、左入(さにゅう)作の赤樂、“菊の絵茶碗”です。
既に8年ほど前になるでしょうか、美術館にて左入作の赤樂“吉野”を拝見しました。
まるで本当に吉野の桜を拝みに行ったかのような気持ちになれる、何とも言えない淡く美しい色合いのお茶碗で、また何とも優しい感じがにじみ出ていて心が和み、それ以来左入さんファンの私。今回の“菊の絵茶碗”にも和ませていただきました。
やはりこれらの茶碗は作った方をうつしているようで、今回の展観の案内にも、
「温厚篤実な人で風流人でもあったそうです。その作品は技巧にすぐれ、性格どおり温厚でしかも丁寧なものが多く、一般に黒よりも赤茶碗がもて囃されています」
とありました。