今日は、11月4日発売の新刊、 『栄西 千光祖師の生涯』(宮脇隆平著・禅文化研究所刊)をご紹介します。
本書の著者、宮脇隆平(みやわき たかひら)さんは、博多聖福寺の元執事だった方で、平成7年の聖福寺の開創八百年慶讚法要の際に記念して発刊された『聖福寺通史』編纂に主として関わられた方です。
その縁があって、栄西禅師の教えに近づけたらという思いのもとに、史料をひもとき、足跡を追って、国内はもとより、中国各地をも歩かれたのです。
そしてできたのが本書。実は以前、『栄西ものがたり』(文芸社)として公刊されていたのですが、絶版品切れとなっていたものを、弊所から加筆修正されて『栄西 千光祖師の生涯』として発刊することになった次第です。
さて、みなさんは「栄西」を「えいさい」とお読みになっていることかと思います。しかし本書では「ようさい」というフリガナを振っています。「栄」を「エイ」と読むのは漢音で、「ヨウ」と読むのが呉音です。したがって、日本に伝わる古来からの漢字の音読としては、呉音である「ヨウ」の方が正しいということになるためです。
また、江戸時代の学僧で高峰東晙禅師という方がおられ、『興禅護国論解』という著書の中で、「栄」に「イヤウ」というフリガナを振られているため、建仁寺では古来、「ようさい」と読むのが伝承であるとのこと。博多の聖福寺でも寺伝で「ようさい」と読んでいるとのことです。
最近は学校教科書などでも「えいさい」ではなく「ようさい」と読ませているものも増えているとのこと。
話はかわりますが、複数の人間で重いものを引っ張る時などに、「エイサーヨイサー」という掛け声をかけることもあろうかと思いますが、実はこの掛け声は、栄西禅師が建仁寺を建立されるときに、大勢の人が巨木を引っ張るのに、どんな掛け声をかえようかと評議しているとき、「わしの名をよぶがいい」と禅師が指示されたので、「エイサイ、ヤウサイ」と掛け声をかけて引っ張ったところ、巨木がなんなく動いたというような逸話があるとのことです。
ともかく、本書にはこんな逸話も紹介されていて、小説風で読みやすいので、おすすめです。
5年後の平成26年には、大本山建仁寺で栄西禅師の800年遠諱大法要も営まれることになっています。