いかなご


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寒さの中にも春の気配が見え始めた3月の初旬、明石市に住む檀家さんからいかなごの佃煮が送られてきた。沖から揚げたばかりの新鮮ないかなごを、醤油や味醂、砂糖、生姜などを入れて炊き込んだ佃煮は釘煮と呼ばれ、この時期神戸周辺では多くの家庭の食卓に並ぶ郷土料理である。
この釘煮が送られてくるようになって20年近くになる。お母様の手作りによるもので、いつも美味しさを堪能しながら春が来たことを実感したものだ。
7年ほど前にお母様が他界されてからも、奥様より「義母のように手作りはできませんが」と断りを入れて老舗の品を毎年送っていただいてきた。
宅配の包みを開けると、釘煮の入ったタッパーには「お口に合いますかどうか」との一文が添えられていた。手作りならでは温かな味わいは、酒の肴にもご飯の友にも最高の一品となった。