ソメイヨシノ


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どこもかしこもソメイヨシノ。
確かに花は美しい。しかし花以外はこれといってとりえのない木。開花時期の数日間に全てを賭け、夏・秋・冬は無残な姿を晒し続ける。
病気や害虫に弱く古木はほとんどない。若木なのにそこかしこが朽ちて穴が開いている。樹皮は黒く醜く、枝ぶりもよくない。満開の桜の中、焼けぼっくいのような真っ黒な幹や枝が目障りだ。
葉もよろしくない。夏には毛虫の大群に襲われる。紅葉も赤・茶・黄色のまだらで何となくきたならしい。
日本の風景に登場したのは江戸末期という新参者。今では日本中にはびこって生物多様性を損なっている。材もこれといった利用価値はない。
春の桜、秋の紅葉という。しかし樹木全体の美しさという点では、ソメイヨシノは逆立ちしたってカエデにはかなわない。
古より日本人が愛でてきた桜は何と言ってもヤマザクラだ。ヤマザクラにはソメイヨシノにはない素晴らしい特徴が数多く備わっている。
洪水のようなソメイヨシノを見て日本美の代表だと思ったら、それは大間違いだろう。