琳派の祖・俵屋宗達といえば、建仁寺蔵の「風神雷神図」があまりにも有名であるが、今から400年近く前、江戸時代初期の1630年頃に描かれた、この「松島図屏風」も俵屋宗達筆の傑作である。
この屏風は、当時の堺の豪商、谷正安が宗達に依頼し、澤庵禅師が開山の堺・祥雲寺に寄贈されたものとされている。
それが約100年前の1902年に、アメリカのチャールズ・フリーアの収集品の一つとなり、その後、ワシントンDCのスミソニアン博物館のフリーア美術館で収蔵されてきたのである。
この度、京都文化協会とキャノンが取り組んでいる「綴プロジェクト」の第三期制作の一作品として、この「松島図屏風」が高精彩複製作品として完成し、祥雲寺に寄贈されたのである。禅文化研究所はその監修という立場で関わっており、寄贈披露式にご招待いただいた次第。
除幕式に続き、このために来日されたフリーア美術館のジェームス・ユーラック副館長から贈呈の言葉が述べられた。
この松島図屏風は、フリーア美術館の所蔵品の中でも、大変重要なものの一つであるが、400年前、宗達や正安は、この屏風がアメリカに渡って大事に保管されているというようなことは想像さえできなかったであろう。だが、この屏風のお蔭で、こうしてアメリカにいる私とこのたび制作に関わっていただいた方々との深い関係ができ、高い文化の交流の橋渡しとなったことは、計らずもすばらしいことであると思うといったような内容であった。ここに複製されたこの屏風は、遠くに嫁いだ愛する娘からの手紙だと思ってほしい。私はアメリカで大事にされている、どうかまたアメリカにも来てくださいと……。
とても心温まる言葉であり感銘を受けた。
この複製屏風は、堺市博物館で保管され、各地での展示はもとより、小中学生たちにも間近に見てもらい、日本文化芸術の素晴らしさや、当時、こういった素晴らしいものを生みだした、堺町衆の文化水準の高さを知ってもらいたいとのことであった。