いつの頃からか、草食男子、肉食女子などという表現がメディアに現われるようになった。何が言いたいのやら、とあまり気にも止めていなかったが、通学の高校生や大学生の会話が毎日バスや電車で中で耳に飛び込んでくるうちに面白いことに気がついた。女子の話題はもっぱら男子のことだが、男子はあまり女子のことを話さない。男子は奥床しく異性のことはそっと胸に秘めているのか、こういうのを草食系と言うのか、もっと以前は、「あの娘(こ)がカワイイ」なんて結構大っぴらに男子も盛り上がっていたのに、なんて可笑しかったが、それも違うのかなふと思った。もしかしたら男子は女子にあまり興味がないのではないかしらん。
最新号のビッグイシュー(イギリス発信のホームレス支援雑誌だが日本語版もあってかなり面白い)に「携帯電話の電磁波リスク」という特集が組まれていた。もう二十年も前から、電磁波が健康に悪影響を及ぼすのではないかと指摘されているようで、電磁波問題は欧米ではかなり感心の高い環境問題らしく、欧州や北欧では、成長期の脳に影響を受けやすい16歳未満の子どもたちに携帯電話を使わせないようにしているという。
電磁波環境研究所主宰の荻野晃也さんは、「携帯電話は小型の電子レンジ」だと言う、「携帯電話を使うと、ホット・スポットが人体組織のあちこちにできる。その影響がどのようになるのかが心配されているのです」。
1999年には、初めて携帯電話ユーザーに脳腫瘍が多いとする疫学研究がスウェーデンで発表されたようだ。荻野さんが今もっとも懸念しているのは、精子への影響だ。「目や睾丸が熱に大変弱いということは、昔からわかっていたのですが、ここ数年、携帯電話で精子がやられているという研究論文が急激に増え始めたんです」。荻野さんは、携帯電話をズボンのポケットに入れるのは止めた方がいいと言う。
もちろん、現時点では携帯電話の危険性が100パーセント確定したわけではないようだ。たとえば携帯電話の電磁波が脳腫瘍を誘発するメカニズムそのものはまだ解明されていない。欧米をはじめとする各国が携帯電話を問題にして規制を強めているのは、危険の可能性が高いなら、慎重にリスクを回避しようとする「予防原則」に基づいているからだと、荻野さんは言う。
どんよりと停滞した出口のないストレス過剰の日々のなかで、片時も携帯電話を手放せない日本の若者たちが、身体的にも蝕まれている可能性が高いとすれば(もちろんこれだけで男子がおとなしいと言ってしまうのは短絡的だが)、やはり「草食男子」などとのんびり現代の風潮を揶揄している場合ではないかもしれないのだ。