奈良国立博物館にて開催中(6/20まで)の、「大遣唐使展」へとでかけました。
幾多の困難が立ちはだかる事を覚悟しつつ、唐の政治・文化・宗教を学び、ひいては日本の国の発展を促す為、大海原へと漕ぎ出して行った、はるかいにしえの賢人達。
彼らによってもたらされた有形無形の諸物を拝見し、彼らや、彼らを送り出した当時の人々の気持ちを充分すぎるくらいに感じ取り、日本という自分が生まれた国を改めて好きになりました。
我が国は、国を形作る制度や思想、宗教、芸術文化などありとあらゆる面で、隣国である中国や韓国から多大なる影響を受けた上で独自の発展をとげ、成り立っているかと思います。
難しい政治の話や外交についてはわかりませんが、もっと自国を知り、もっと相手国を知り、如何に多くの素晴らしいものが我が国にもたらされて来たかを知れば、先の大戦の様々な辛い過去がありながらも、良好な友好関係を築けるのでは?!と思うのは一庶民の単なる理想に過ぎないのでしょうか。柳宗悦さんも、著書の中でそのような事を語っておられたかと思います。
さて、話が脱線しましたが、この展観を見るにつけ、「現代人はいろいろなものを失ったものだなぁ」との思いが徐々に大きくなってゆきました。
妙心寺が発行している冊子『花園』6月号に、神戸女学院大学教授の内田樹先生のお話があり、ハッとさせられました。
「競争的環境は能力を向上させるか」と題したものです。このすばらしい文章のしめくくりに、
人類の長い経験が教えるのは、人間は「他人のために」生きようとするときに、もっとも効果的にその潜在能力を開花させるということである。この素朴な「常識」にもう一度立ち戻るときが来ていると私は思う。
とありました。大遣唐使展をみていると、少しでもその「常識」に立ち戻る為のヒントがたくさんあるような気がしたのです。
自身の命の危険を顧みず、国家向上の為に海を渡った人々。その真摯でひたむきな志しに、多くの人が触れる事を期待し、またこの文章を読んで下さった皆様にもご覧いただきたいと思った次第です。
平城遷都1300年記念で盛り上がる奈良。是非おでかけになってみてください。