建仁寺218世・南禅寺231世に昇った天隠龍沢が、唐・宋・元の諸名家の絶句328首を門類に編纂したもの。康正2年(1456)以来、10数回板刻出版され、多くの作詩者に愛好された。禅味ゆたかな句が多く、初歩の作詩者には必携の典籍とされる。本書は、その代表的注釈書で、10巻10冊からなる。注釈者は、岩国藩の藩儒を勤め、若き荻生徂徠に影響を与えた宇都宮遯庵。遯庵の学風は、一語一句を厳密に出典に依拠して解釈する、極めて精緻な注釈学で、そのために「虱(しらみ)先生」とあだ名されたほどである。本書も、遯庵自ら、「幼学の者をして之れを暁らし易からしめんが為に」と記すように、詩句の典拠、詩意の解釈など、懇切に教えている。万治4年(1661)刊。
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