大慧が古人の行履を拈挙し、法嗣の道謙が編録したもの。本書は安永5年の再刻、上下巻二冊本。表紙右端に朱筆で「駿河三島龍沢寺豊洲禅師手沢本」と書かれ、更に、題簽に同じく朱筆で、「白隠提唱書入本/東嶺講評書添」と記され、上下二冊の終わりには、「豆州円通山 豊洲」の署名と花押が書かれている。円通山は龍沢寺のこと、豊洲はその第三世祖英禅師である。「鵠林(白隠の号)云く……」「三光(東嶺の号)云く……」などと、朱と墨で細かく書き入れが施されている。特に目を引くのは、欄外に書かれた、各則ごとの要旨を記した短いコメントである。例えば、第一則の欄外には、「此の章、話頭透過の功は万行を超越し、学者、勉める可きの急ならんことを明らかにす。只だ無心無分別、是れ衲子の第一たらんことを明らかにす(原漢文)」とある。白隠―東嶺―豊洲の三代による「宗門武庫」の評唱本であり、稀覯本中の稀覯本である。
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